「ちょっとAIを使う」が成果につながらない理由
「ちょっとAIを使う」は、成果につながらない。
差を分けるのは、才能でも道具の性能でもなく、業務の設計図の有無だ。
毎朝2つの無人工場が動く自社を例に、その分かれ目を書く。
一般論として、AI活用はここで止まる
一般論として、AIの導入は「文章を直させる」「調べ物をさせる」から始まり、多くはそこで止まる。
止まる理由ははっきりしている。業務が工程に分解されていないからだ。「この業務のどの工程を、どこまでAIに渡すか」という設計図がない状態で道具だけを持てば、誰でも同じ場所で止まる。AIは便利な相談相手のまま終わり、業務そのものは以前と同じ手順のまま残る。
止まる会社に足りないのは熱意でも能力でもない。渡すための設計図が、まだ描かれていないだけだ。
仕組みごと渡した会社では何が起きるか——自社の実例
うちでは毎朝、人が起きる前に工場が動き出す。
03:00、講演コンテンツの制作工場が起動し、台本一式6点を毎朝1本納品する。
04:00、動画工場が起動し、AIタレントTSUKIの長尺動画2本を、台本から音声、字幕まで無人で仕上げる。
音楽工場も同じ形で組んだ。作曲からジャケット付与、公開までを無人で行い、バッチを走らせた7月21日には140曲、22日には260曲を生成した。この工場だけは7月27日にこちらの判断で停止させ、いまは動かしていない。
そして5分ごとに、コレクターが全AI社員の稼働を記録し、mon-ai.jpの出勤板にライブ表示する。
使っているAIの頭脳は、文章を直してもらうときと同じものだ。違うのは渡し方で、うちは業務を工程に分解し、渡せる工程を「毎朝決まった時刻に勝手に動く仕組み」として渡した。
工場の外にも実物がある。Appleの審査を通過してApp Storeで公開中の朝活アプリAM38。導入先の店で毎日の営業に使われている店舗管理システムYoruTool。Webカタログに1,315曲・74プレイリストを公開しているWebアプリBGMUP。どれも、業務や製品を仕組みごとAIに渡した先に生まれた実物だ。
止める前の音楽工場を工程分解すると、こうなっていた。
| 工程 | 無人化度 |
|---|---|
| 作曲 | 完全無人 |
| ジャケット付与 | 完全無人 |
| 公開 | 完全無人 |
| 残高など資源の監視 | 完全無人 |
| 稼働の記録(出勤板への表示) | 完全無人 |
| 工場の設計と改修 | 人間必須 |
最下段だけが人間の仕事だ。設計図を描くこと。それが、AIに何かを頼むことより先に来る。
難しい側も書いておく
仕組みごと渡しても、すべてが無人になるわけではない。うちでも成果物の一次チェック(誤字・規格崩れ・禁止表現)は機械化したが、最終検収は人間に残している。
さらに、無人工場は設計に穴があればそのまま止まる。うちは実際に、クォータ切れで工場が空振りし、毎時ルーチンが空回りし、音声エンジンのハングで1日分の生成に失敗した。原因はどれも人間側の設計の穴だ。塞いだ後の音楽工場は7月21日に140曲、22日に260曲を無人で生成しきったが、24日から27日はクォータ切れで0曲になり、27日にこちらの判断で止めた。
設計図を描き、穴を塞ぎ続ける仕事は残る。その先にあるのが、採用しなくても回る会社だ。うちの運営はほぼ一人+AI社員で、制作・納品の大部分が無人化されている。
念のため書いておくと、「ちょっと使う」は入り口としては正しい。入り口の先へ進むときに要るものが、業務を工程に分解した設計図だ。設計図さえあれば、同じ道具が仕組みに変わる。
導入までの手順
- 成果につなげたい業務をひとつ選び、工程に分解する
- 工程ごとに「完全無人/検品のみ人間/半自動/補助/人間必須」の線を引く
- 完全無人にできる工程から、毎日決まった時刻に勝手に動く仕組みとして渡す
この線は、会社ごとに引き直せる。あなたの会社の設計図は実装設計図で一緒に描き、うちの工場が今朝も動いた証拠は、mon-ai.jpのオフィス(出勤板)で公開している。