社内マニュアルの作成と更新は、AIでどこまで無人化できるか
社内マニュアルは、書く工程を無人化できる。無人化できないのは、何を正しい手順とするかを決める工程だ。マニュアルが腐るのは書き手がいないからではなく、決める人がいないからである。
以下の工程分解と無人化度は、一般論としての整理だ。そのうえで「機械が書いたものを、どうやって使える状態に保つか」は、当社が毎朝の運用で実際に解いている問いになる。
工程分解表(一般論として)
| 工程 | 内容 | 無人化度 |
|---|---|---|
| 1. 手順の聞き取り | 担当者が実際にやっている作業の棚卸し | 補助 |
| 2. 何を正とするかの決め | 複数のやり方から公式手順を決める | 人間必須 |
| 3. 文章化 | 決まった手順を読める文書に起こす | 検品のみ人間 |
| 4. 表記・様式の統一 | 用語・見出し・書式を全文書でそろえる | 完全無人 |
| 5. 図版・画面キャプチャの用意 | 手順に対応する図の作成 | 半自動 |
| 6. 陳腐化の検出 | 仕組みが変わった箇所を洗い出す | 半自動 |
| 7. 改訂の判断と反映 | 直すか、運用を戻すかを決める | 人間必須 |
無人化できる側
文章化は、AIに渡していい工程の代表格だ。箇条書きのメモと画面の説明を投げれば、前提・手順・つまずきどころまで含んだ文書が返ってくる。人が半日かけて整える整形作業が、検品だけの仕事になる。
表記・様式の統一は完全無人にできる。用語のゆれ、見出しの階層、日付や数字の書き方は、規則さえ書き出せば機械が全文書に対して機械的に当てられる。人間がやると必ず取りこぼす種類の仕事で、機械がやると取りこぼさない。当社では、成果物の一次チェック(誤字・規格崩れ・禁止表現)を機械チェックとして実装し、人の目視から外している。
陳腐化の検出も半自動にできる。手順書が指しているツールや画面が変わったとき、その差分を洗い出して「ここは古い」と並べるところまでは機械の仕事だ。
AIには難しいこと
手順の聞き取りを補助までにしたのは、現場の実態が文書にも記録にも残っていないからだ。担当者が無意識にやっている確認や、例外時の裏の運用は、聞き取りの場で初めて出てくる。AIは質問票を作れるが、相手の顔色から「いま言い淀んだところに本当の手順がある」と踏み込むことはできない。
何を正とするかの決めは人間必須だ。同じ作業に三人のやり方があるとき、どれを公式にするかは、責任と権限をどこに置くかという経営判断になる。AIは三通りを整理して並べられるが、選べない。選ばないまま全部を書き込んだマニュアルは、読んだ人が迷うだけの文書になる。
改訂の判断も同じだ。仕組みが変わったとき、文書を新しい仕組みに合わせるのか、運用を元に戻すのか。この選択は現場の負荷と目的を天秤にかける仕事で、差分の一覧からは導けない。
うちではこう線を引いた
当社では毎朝03:00に講演コンテンツの制作工場が無人で起動し、台本一式6点を1本ぶん納品する。04:00には動画工場が起動し、台本から音声、字幕までを無人で仕上げる。このブログも、AI社員が書き、機械検品を通過したものだけが無人で公開される。内容の最終責任はMON-AIが負う。
これらの工場が動き続けている理由は、書く力ではない側にある。「何を正とするか」を先に人間が書き下し、機械が守れる形の規則にしてあるからだ。禁止する表現、使ってよい事実、記事の型。この三つを文書として固定した時点で、書く工程は機械に渡せるようになった。マニュアルも構図は同じで、正を決める仕事を人が引き受けるほど、書く仕事は機械に渡せる。
導入までの3ステップ
- 一番よく使う手順を1本だけ選び、担当者への聞き取りで「何を正とするか」を決めて書き下す
- 表記規則を先に文書化し、文章化と様式統一をAIに任せる
- 仕組みを変えたときに差分が上がる動線を作り、改訂の判断だけを人の仕事として残す
この線は、会社ごとに引き直せる。自社の文書管理のどこまでを機械に渡すかを図面に落とす実装設計図(¥98,000)があり、まず現状を見立てるだけなら無料相談から始められる。