機械の一覧に、人間の保留は載っていない——着手させる前の一層
無人で回るラインは、必ず「次にやること」の一覧を見て着手する。この一覧を作るのは機械だが、「これは着手前に人の判断が要る」と決めるのは人間だ。両者を同じ一覧に置かないと、判断待ちの案件は黙って通過する。
当社では2026年8月11日に、これをそのまま踏んだ。
工程分解表
| 工程 | 内容 | 無人化度 |
|---|---|---|
| 1. 制作待ちの案件を集めて一覧にする | 未処理のものを機械が並べる | 完全無人 |
| 2. 一覧から着手する1件を選ぶ | 古い順など、決めた規則で選ぶ | 完全無人 |
| 3. その1件に人の保留が付いていないか照合する | 着手禁止の印を見る | 補助 |
| 4. 保留の中身を判断する | 出すか、変えるか、見送るか | 人間必須 |
| 5. 制作の実行 | 台本から成果物まで作る | 完全無人 |
| 6. 規格の検品 | 形式・禁止表現・台帳外の数字を当てる | 完全無人 |
| 7. 並べたときの見え方の判断 | 過去作と重ならないか | 人間必須 |
何が起きたか
日次ルーチンが制作待ちの一覧から最も古い1件を拾い、1本ぶん書き切った。ところが記憶側には、その案件について「過去作とネタが被るので着手前に判断を取る」と、前々日の日付で明記してあった。ルーチンはその記述を読まずに着手し、判断は事後に取ることになった。
止まらなかった理由は単純だ。一覧に警告を出す仕組みは、題名がほぼ一致する場合しか印を付けない。今回の案件は過去作と同名の作品が別のフォルダにあったが、判定が制作待ち側だけを見ていたため印が付かなかった。機械が黙っている状態を「未処理」と読んだのが誤りで、正しくは「機械は知らない」だった。
実際に重なっていたのは骨組みの一部だけで、重なった箇所を差し替えて出荷した。損害は出ていない。危ないのは結果ではなく、判断待ちが素通りする経路がそのまま残っていたことのほうだ。
無人化できる側
一覧を作る工程と、そこから1件を選ぶ工程は完全無人にできる。何を未処理とみなすかの規則が書かれていれば、機械は毎回同じ基準で並べる。人が目で見て「たぶんこれが次」と決めるより取りこぼしが少ない。
制作そのものと規格の検品も無人でよい。形式が崩れていないか、禁止した表現が混ざっていないか、台帳にない数字が入っていないかは、規則が文書になっていれば機械が毎回きっちり当てる。当社のブログは2026年7月23日から、この検品を通過したものだけが無人で公開されている。毎朝04:00に起動する動画工場も、台本から音声、字幕までを無人で仕上げる。
AIには難しいこと
難しいのは工程3と4、つまり「着手してよいか」の層だ。
人が付ける保留は、たいてい文章で残る。作業メモ、決定の記録、前回の申し送り。どれも人間には読めるが、無人実行は一覧しか見ない。文章で書かれた保留は、機械にとって存在しないのと同じになる。
工程7も人間必須のままにしてある。過去作と並べたときにどう見えるかは、一本ずつの中身を照合しても答えが出ない。全体の並びを見て決める種類の判断で、そこは人が持つ。
うちではこう線を引いた
暫定として、制作待ちの一覧を読むときに必ず先に開くメモの先頭へ、着手禁止の案件を並べた。無人実行は一覧より先にそこを読む。文章での申し送りを、着手経路の中に物理的に割り込ませた形だ。
同時に、恒久の直し方は一覧そのものに保留の印を持たせることだと台帳へ書いた。運用のメモに書くだけでは、次に誰かが一覧の作り方を変えたときに消える。当社では新しい事故が起きるたび、記録へ追記してから直す順序にしている。
導入までの3ステップ
- 無人ラインが着手前に見ている一覧を1つ特定し、そこに何が載っていないかを書き出す
- 人が付けた保留の置き場所を1か所に決め、その一覧を読む前に必ず開く順序にする
- 保留を機械が読める印に変える。文章のままにしない
この線は、会社ごとに引き直せる。どの工程に人の判断を残し、どこから機械に渡すかを図面に落とす実装設計図(¥98,000)があり、まず現状を見立てるだけなら無料相談から始められる。